Sunday, December 28, 2014

博士論文予備審査は無事に終了

今日の博士論文予備審査は無事に終了。審査員たちから沢山の素晴らしく且つ鋭い指摘・コメント・批判を受けたのでこれから3月の提出〆切に間に合うよう書き直しを頑張ります。博論の要旨を日本語で簡単に説明するためにこのレジュメを作ったのでどうぞご覧下さい。

モリソン・ライアン
Waves Into the Dark:石川淳初期作品論』博士論文概要


*著者の略歴と出版の概要
*先行研究における二つの傾向→抵抗性・政治性と反私小説の観点
*拙論主張→それよりも、日本近代文学において主流であったとされる写実的リアリズムに対する対抗言説(counter-discourse)として石川文学を理解すべきである。
*そして、作品によってその対抗言説の内容・戦略・立場・方法・対象・ターゲットなどが大いに異なる。
*この論文の目標は初期における五つの代表的作品のそれらを明確にすること。
*明治以降のリアリズム・前期自然主義・後期自然主義の概要と、それらに対する反発としてのロマン主義、象徴主義、モダニズムなどの文学運動の概要。


1部、二つの「自画像」

1章「佳人」(1935) --写実的リアリズムに対する対抗言説としての私小説パロディ

「私小説」の基礎前提を覆すために4つの手法を使用
(1) 深層における間テキスト性 (deep intertextuality)→「芸術家小説」形式と「憑依小説」形式の構造・要素を借用
(2) 語りにおけるパフォーマンス性 (narrative performativity)、著者と語り手が単一でないことを誇張
(3) 表面的媒介 (surface mediation)→過去の文学テキストへの直接的言及・引用の汎用
(4) 寓意性 (allegoricity)→隠喩・象徴に富む「探求物語」(quest narrative) の形式をとる

2章 「山桜」(1936) --写実的リアリズムに対する対抗言説としての「寓意的ファンタスティック」

*日本における幻想文学の在り方
*T・トドロフによる「the fantastic」の概念と「山桜」の関係
*錯覚する「私」とその三つの視点
*「表象の危機」というテーマ、言語の二重役割


2部、初期評論、『文学大概』(1942)

3章「短編小説の構成」(1940) --写実的リアリズムに対する対抗言説としての(間接的な)小説論

主張→直接の課題である「短編小説」を説明することによってそれと対照的である「小説」の正体を示唆的に論じている。

*長さによる小説分類方法の批判
*小説の出来方についての記述→「俗信」と実過程
*短編小説の二種類(コントとヌーベル)とそれぞれの出来方・特徴・起源系譜
*石川による小説概念、「短編」観

4章「文章の形式と内容」(1940) --写実的リアリズムに対する対抗言説としての純粋散文エクリチュール論

「エクリチュール」という概念と照らし合わせながら石川による「純粋散文」概念の詳細を解明する。

*モダニズムにおける「純粋」概念の概要
*「文章」の二つの意味
*「文章」の記述的理論、普遍的4条件→(1) 物質性・可視性、(2) 話し言葉との相違・距離(言文一致批判)、(3) 特殊性・国家性の必然性、(4) 非私的公的な行為として
*「文章」の規範理論、純粋散文エクリチュールの4条件→(1) 話し言葉との相違・距離(言文一致批判)、(2) 「型」に頼らず、(3) 技術的に発展し過ぎず、(4) 詩的要素の排斥
*「内容的価値論争」などの「形式と内容問題」を巡る文学論争の概要、そしてその問題を超越する「意識されざる内容」の提供

5章 「江戸人の発想法について」(1943) --写実的リアリズムに対する反言説としての俳諧美学

主張→江戸人の発想方についてと言いながらこの評論は実は近代の発想方についての暗示的な批判書である。

序→石川の「江戸留学」と先行研究におけるその解釈の傾向
*俳諧・連歌・狂歌・天明期・大田南畝・川柳などの概要
*「抵抗としての江戸」(Edo as opposition)という歴史的背景と石川の江戸
*「お竹伝説」とその裏にある複数のテキスト
* 近世の発想方と近代の発想の暗示的対比
* 俳諧化とその5つの「転換の操作」→見立て・俗化・やつし・本歌取り・本詩取り

6章 まとめ


付録 英訳

No comments: